2018年9月2日(日)



面会に行っても、滞在している時間はどんどん短くなってきている。
あまり変化がないというのもその理由だ。
昨日のように、驚かされるようなことが起これば別だが・・・

今日の母も普段私が知っている母の姿で寝ていた。
話しかけても何をしても寝ているばかり。

リハビリは午前中にあったようだ。
今日も起立訓練をして、疲れたのだろうか?

看護師が私に気づき、話しかけてきた。
「さっきまで、車いすに座っていたんですよ。窓を少し開けて風を感じたら、目をしっかりと開けていました」

『そうか、リハビリを午前中に終えて、午後からは車いすに座っていたのか』
『それでは確かに疲れただろう。私に反応しないのも無理はないか…』
『今日も早々に切り上げるかな?』

そんなことを考えながらふと顔を上げると、50代後半の男性が立っていた。
私はすぐにこの方が、母が倒れる前まで通っていた整骨院の院長だと理解した。
なぜなら、昨日電話があったからだ。
この整骨院は支店?をいくつか持ち、リハビリのデイサービスも展開している。
院長は忙しいため、最近は母を診ることもなくなっていた。
そのため、母が倒れたと聞いたのはつい最近のことだったらしい。

寝ている母の耳元で
「ボケちゃーん、ボケちゃーん!」と大きな声で呼びかける。
目を覚まさせようとしているのだろうが、そんな大きな声を出さずとも(それも耳元で)母には聞こえている。。。。

「ボケちゃん、だれが来たかわかるか? この声でわかるやろ? また一緒に出掛けようや。みんなで一緒にでかけよう」と話しかけながら、母の首の後ろ側から頭、肩を揉んだ。


「硬くなっているな」
と呟いた後、(私と母にとって)決定的な一言を院長は放った。

「ボケちゃん、これでは家に帰られへんな・・・」

『なんてことを。母には聞こえている。ちゃんと聞こえているのに』
『リハビリだって嫌がらずに頑張っているのに』だんだん私の心は悶々としてきた。

そして院長に向かって私は言った。

「そうですね、そう思いますよね。でも、母にはいつも話しかけているんですよ。奇跡を起こそうな、って」

院長は私の方を向いたが反応はなかった。「それは夢物語やで」と言いたいのを抑えるように。
そして私に向かって、
「家族の方が一番大変なんです。何よりも、ご自身の体を一番に考えてください。今は、それが一番大切なことです」と言った。
『夢物語を考えるよりも私の健康を考えよ,ということか』と私の心の声はつぶやいたが、

「ありがとうございます。本当にそう思います」と伝えて頭を下げた。

院長を見送り、母のベッドのそばに戻ると、寝息を立てていたはずの母が大きく息を吐いた。

「はぁ~~、あ」とため息をついた(ように私は感じた)

その反応に私は思わず笑ってしまい、
「失礼なことを言うね」「嵐が去ったから安心して眠って」「奇跡を起こして院長をびっくりさせような」と話しかけながら母の頭を撫でた。

母はまた寝息を立て始めた。