愛しくてたまらない日々

要介護1の母が、くも膜下出血発症! 突然の手術、看護、リハビリ、そして自分の生活の変化。介護の日々が、「愛しくてたまらない日々」になれたらいいな、、、と希望だけはもちつづけられるように。

カテゴリ: 発熱

2018年8月19日(日)


母のところに行くと、母は窓の方に身体を向けて眠っていた。
今日は熱が出ているらしく、氷枕を抱えている。
身体を触ると、確かに熱い。

大きく口をあけての口呼吸は相変わらず。
熱が出ていることにより、いつもよりも呼吸も苦しいのだろう。

私が「来たよ」と話しかけるも、薄目を開ける程度ですぐに寝てしまった。
そして再び、右手にむくみが見られた。

意識がすっきりと覚せいするということはないのか?
目を開ける時間は少しずつ伸びているものの、意識の覚醒がすすんでいるという感じはしなかった。

相変らず、意識障害が続いている、というのが今の状態だろう。


ほぼほぼ寝ているだけの母を残して、私は少しデイルーム(休憩室)に行った。
前にも書いたが、高台に病院はありとても景色が良い。

日曜日のためか、普段、お見舞いにこない家族も訪れていて大声で談笑している。


そんななか、ある父娘の会話が耳にとまった。転院の話をしているようだった。
70代とみられるお父さんが話す。
「せめて物がたべられたらいいのにな」
この方の奥さんが患者さんである。車いすにあまり表情もかえずに座っている。
母と同じで、話すこともできないようだ。そして鼻からのチューブ栄養であることも母と同じだ。

「鼻からの栄養では受け入れてくれるところも限られるみたいやわ」
「どうせなら近くの方がいいしな」
「いろいろ考えて早いうちにきめなあかん」

そう、前にも書いたがここは急性期病院なので2ヶ月で転院しなければならない。
実際には、1カ月以内の転院が望ましい。

この男性も、毎日奥さまのところに来られていた。
車いすに座った奥さんの横にいつも寄り添っていた。
どんな気持ちで毎日を過ごしているのだろう。

この夫婦にはこの夫婦の長い歴史があるはずだ。

この夫婦を見るたびに、この男性の胸中を慮る。
声をかけたい衝動にかられるが、かけなかった。
「話し相手がいるだけで随分違うだろうに、、、、」と思った。それも同じ境遇の。

娘さんと話している時のこの男性はいつも私が見ている男性とは違って
テンションが高く、心配をかけまいとしている姿が映し出されていた。ちょっと別人のようだった。

親は子に心配をかけまいと、迷惑をかけまいと、そのことを第一に考えているのだ。
本当は相談したいこともあるだろうに。。。
そう思うと、胸が熱くなった。

2018年8月12日(日)


企業も夏休み真っただ中。
休暇で出かける家族も多いのだろう。
気のせいか、看護スタッフも今日はいつもよりも少ない気がする。
看護スタッフだけではない.
全体的に少ないのではないだろうか。


母は相変わらず、NCUで大口を開けて眠っている。
熱も下がっていない。
舌が奥の方(喉の方)に入ってしまっているので、呼吸はさらにしんどそうだ。
意識がはっきりと戻ってこないので、どうしても舌が奥にいってしまうらしい。
そのせいで睡眠も浅いのかもしれない。

そんなことを思って、「しんどいの? 眠れないの?」と耳元で尋ねてみるが、本人が目も開けないのではこちらも判断のしようがない。


私は今日もまた、眠っている母の耳元で、「リハビリして、元気になって、みんなを驚かしてやろうね。奇跡を起こそうね」とささやく。

思い立つ度に、またささやく。そんなことを繰り返していた。
『もう、こうなったら潜在意識に働きかけるか、洗脳よ(笑)』そんな気持ちだった。
それくらい、熱が下がらないことも含めて、意識レベルでの変化がないことがしんどかった。

洗脳(?)のおかげか、私の思いが伝わったのか、昨日と同じように母の手をマッサージしていると、寝ているはずの母が私の手を握り返してきた。
それも結構、しっかりと!
で、これまた、昨日と同じように、同じリズムで同じ動作を繰り返す。
私の声の「リハビリ」という言葉に反応したのだろうか?
それとも、夢の中でもデイサービスに行って、お友達と一緒に運動しているのだろか?

目を開けることもしないのに、手の運動だけは何度も繰り返す。
彼女は一生懸命、休むことなく、デイサービスで教わった運動をしている
そう思うと、涙が出てきた。私は鼻をすすり、ティッシュで涙を拭いた。
なぜだか、母の姿があまりにも健気に感じて、心が痛かった。


2018年8月9日(木)


今日もNCUの部屋の中ではモーツアルトが流れている。
私が入ると、母は口を開け、氷枕を脇に抱えていた。


『またか』

私は正直そう思った。
この2日は熱が下がっていたことで、少し安心していた。
『あとは、意識さえ、意識さえはっきりと戻ってきてくれれば!』そう考えていた。

そこへ、再びの発熱である。
毎日よくなったり、そうでなかったり・・・

くも膜下出血は術後の管理がすごく大切とは知っていたが、これほどまでに安定しないとは想像していなかった。

毎日、母の見舞いに行くたびにドキドキする。
『今日は昨日よりもよくなっているだろうか?』
『それとも、苦しそうにしているのだろうか?』
母の状態が良くない時には、彼女の苦しそうな姿を見るのが本当に辛くてたまらない。


それでも、今日はお風呂に入れてもらえた。
『熱があっても、お風呂に入れてもらえるのだ』そのことに驚いた。
そしてすっきりして戻ってきた母に、「よかったね」と声をかける。

その私の言葉に反応があったような気がするが、確かではない。
たまに目は開けるものの、ほとんど寝ている。
そして目を開けたとしても、その目に力や輝きは感じられない。

私はすっきりしてもどってきた母の髪をなでる。
「二人で奇跡を起こそうね。みんなをびっくりさせてやろう。絶対に元気になろうね」と耳元で話しかけた。
わかっているかどうかは関係なかった。
私の思いを彼女に伝えたかった。

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