2018年8月11日(土)山の日


今日から職場もお盆休みだ。15日まで。

病棟内のデイルーム(休憩室)も見舞いにきた家族の話声や笑い声がにぎやかに響いていた。

母は今日も発熱中!
私には発熱によって体力が消耗していくことが気になっていた。
また、通常の私たちでも、高熱が続くことによって『脳炎』が起きることもあるのだから、母のこの熱が下がらないという状況が、脳にさらなる負担や損傷を負わせるのではないかということが気掛かりだった。

NCUのメンバー(患者さん)も入れ替わりが激しい。
症状が落ち着いてくると、通常の一般の部屋に移っていく。
母が一般の部屋に移れる日は来るのだろうか?

母はほぼほぼ寝ているが、時折、目を開ける。
その時を見計らって、彼女が気に入っていつも持ち歩いていた『タオルハンカチ』を見せる。
そして、鼻のところに持っていき、香りをかがせる。
「ね?懐かしい家のにおいがするでしょう?」
母は、私の方を感情の伴わない目でみていた。理解しているのか、どうなのか・・・まったくもって読むことができない。


今日も母の髪を撫で、母の耳元でささやく。
「リハビリすると歩けるようになるし、話せるようになるからね」
(母は話すことができないし、今では声を出すこともできなくなっていた)
私は、何度も何度も話しかける。「大丈夫、安心して。ちゃんとできるようになるからね」と。

母はその間も目を閉じたままだ。聞いているのか聞いていないのか。

そして母の右手を私はマッサージした。
母は私の手を握り返してきた。私のマッサージする手を握り返してきたのだ!!

それから、あるきまった動作で母は握った右手を動かす。
どうやら、倒れる前に、週2で通っていたデイサービスで覚えた運動をしているようだった。

そういえば、倒れる前日も
「握力がないって言われているから、(デイサービスで)握力をつける運動をしている」と話していたっけ。

それを思い出しているのだろうか。
私の手を握りながら、一定のリズムを刻み規則正しい動きが続く。

いつまでも止めようとしない母にたいして「ちょっとずつ、ちょっとずつだよ」と声をかける。
母の『運動』は止まることがなかった。


私は自分の手を外し、母の『運動』を止めさせた。